男子便所

小学校のころ、学校の帰り道にうんこをもらしたことがある。
5、6年生のころだったか。

今思うと我ながらニヤニヤしてしまうが、それはもう情け無い経験というか、情け容赦ない経験だった。
給食の何かがまずかったのか。

帰り際に、同じ小学校に通う弟と出会い、一緒に帰っている途中の出来事。
学校出てすぐに出た。出て出たわけやな。
たしか急にきた気がする。
突発的な事故。
「オオォ…」
とか言うてたかもわからんな。

当時愛用していた忍者タートルズのブリーフパンツが、ムーディーなセピア色に染まりその風情に深みを増していたころ、僕は瞬発的に繰り出したガニマタでその騒ぎを水際で防ぎ止めた。
…かに思えたのも束の間、予想を遥かに上回る量のフーリガンは、小さな子供用ブリーフのサイドギャザー(?)などはまったく問題ではないといった様子で、今にも決壊せん勢い。

びっくりするほどたっぷり出た。

追撃とばかりに本部へ「何やら若干ユルい」といった項の知らせが届き、これはいよいよアカンと思った刹那、第二波の予兆が僕にさらなる追い打ちをかけた。

心配する弟をよそに、僕は、この世のものとは思えないほど面白い顔をしながら、出来るだけ腹部への衝撃を避けつつゆっくりと家路につく。
しかし、僕の家は学校から歩いて20分ほどの道のりがあり、キッズ達にはとても近いとは言えなかった。
確実に第二波の餌食になることは目に見えていたが、出来るかぎり被害が広がらないうち帰ろうと必死にあがいた。

見事なガニマタで、反乱軍の内股への攻撃をかわしつつ、これまた世にも奇妙な歩き方で少しづつ前進する俺。
不意に、仲間だと思っていた1人から残酷な質問が投げかけられる。
「まだ出ない?もうちょっと我慢出来る?」
意識を肛門に戻してしまった僕は、弟の愚問が終わるより前に
「今出てる」
と答えていた。
えも言えぬ笑みをうっすらと浮かべて。
第二波は容赦なく忍者タートルズを襲う。今や彼等に忍者の面影はまったく無い。
ただの茶色い陸亀に過ぎなかった。

家に帰り着いた時には完全にゾンビと化した僕と、今朝とは完全に兄を見る目が変わった弟。
6階の部屋に向かうエレベーターの中は、妙に静まり返り、絶望や安堵等様々な感情が入り交じり、暗澹として、とても言い表せない。

すぐにトイレに向かうものの、帰り道で全ての収穫を終えていたので、あとは年貢を便器に納めるのみ。
初めて自分でパンツを洗い、シャワーを浴び、着替えてソファーに座り、牛乳を飲む。

清々しい笑顔で明日に思いを馳せる、大きく成長した少年がそこにいた。
少年よ、大志を抱け!

うんこケーキ

そんな僕も大人になり、いまや秋田ゼミの副頭。めんどくさいけど、がんばろうと思う。
副頭っておいしいよな。正直ねらっとってんか。